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野口教授の「国債破綻」論(文藝春秋10年3月号より [厳しい現実]

野口教授の「国債破綻」論(文藝春秋10年3月号より

結論としては最後は莫大な国の借金は「円の暴落とインフレの発生」という形で国民が犠牲になって負担することになろう。1円1ドルとか1ドル10000円とか言う学者もいる。そしてすごいハイパーインフレで実質国の借金が減る。(筆者コメント)、ここをうまく切り抜ける知恵がいる。

野口教授の「国債破綻」論は、10年度予算の分析に始まりその結末の予想で終わる。
予算は歳出92兆円、税収37兆円、差額補填は実質55兆円の国債発行であった。
この予算には「日本の死相」が明瞭に現れており「まともに直視すれば、気が狂ってしまう事態である」。862兆円も国に借金があっても「日本には1400兆円の個人金融資産があるから大丈夫」というのは誤りだ。個人金融資産は銀行預金などの形ですでに使われている。新たな水(新規国債発行)を入れるのには桶(おけ)のサイズが毎年大きくなる(個人金融資産の増加=経済成長)か、すでに入っている水を抜く(企業貸出しの減少)必要がある。しかし個人金融資産の源泉たる貯蓄率は90年代の10%から1.7%(07年)にまで低下した。桶は以前のように大きくならないのである。90年代の銀行の企業融資残高は500兆円だったの最近は400兆円に落ち込んだ。つまり「水を抜いて」(貸付けを減らして)銀行が国債を買った。国債増発はこの「水抜き」メカニズムに支えられているのである。このメカニズムは限界に達しつつある。

《円の暴落とインフレの発生》
 国内で国債が消化できなければ次には外国のカネに頼ることになる。
しかし論文は「日本の死相」に関する外国発信の警告を述べている。
IMF(国際通貨基金)は10年1月26日の「国際金融安定性報告」で日本国債への市場の警戒感が高まったと指摘した。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は日本国債格付け引き下げの可能性を示唆した。野口はいう。
▼現在の予算に見られるように無駄な用途に用いられて将来の返済能力強化に役立っていないと判断されて〈日本国債は危ないから買わない〉と評価される危険は大きい。そうなれば、日本国債は買い叩かれて暴落する。
国債暴落は円安を呼び円安は物価高につながる。膨大な国債残高はインフレによって解消される結果になる可能性が大きい。これが野口の予想する結末である。
そもそもインフレによって国の大型借金を解消した実例には第2次大戦後の日本の「傾斜生産方式」がある。復興金融金庫が金融債を発行しそれを日銀が引きうける。そうして調達した資金を石炭・鉄鋼業界に重点融資した。金融債の日銀引受けは通貨発行と変わらないから猛烈なインフレが起きた。45年から49年の間に物価は60倍になった。基幹産業は借入資金による生産で巨額な利益を挙げた。終戦直後の国債残高は一般会計総額の5倍だったのがインフレで約4分の1に低下した。一方で戦争協力として国民が購入した戦時国債は紙クズになった。
これと同じことが今の日本で物価が60倍になったらどうなるか。
国の借金は16兆円に減少する。1400兆円の個人金融資産も60分の1に下落する。

《心許ないインフレへ歯止め策》
 インフレ抑制のための歯止めはないのか。2つある。
1つは、財政法第4条の建設国債規定である。これは借金による歳出を禁止している。
例外は国家資産を残す「建設国債」発行である。さらに公共事業目的以外の「特例国債」が可能となり98年頃から増加した。現に10年度予算では「特例国債」だけで38兆円になる。
2つは、財政法第5条による日銀による国債引受禁止である。だが銀行保有の国債の買上げは可能だ。現に68兆円の国債を日銀が保有している。さらに国会議決があれば日銀引受けも可能だ。要するに2つの歯止めは「しり抜け」になっている。これが財政規律の現状である。

ただし国債は「子孫にツケをまわす」というのは誤りだと野口はいう。説明はこうである。
▼日本国債の大部分は内国債である。家計にたとえれば、銀行や外部から借入ではなく夫が妻から借金するようなものだ。だから、担保は必要ない。さらに言えば、子供が借金の返済に苦労することもない。つまり、負担が将来世代に移転することはない。(増税して内国債を償還すれば、税負担は増える。しかし、他方で償還を受けるので、差引きの国民負担が増えるわけではない)。
だが、「家計の貸し借りだから(内国債だから)、問題ない」とは言えない。夫の借金(国債)は酒代(無駄な財政支出)のためであり、店を経営する妻(民間部門)が、店の改装費用(工場などの投資)を犠牲にして貸しているのだとしよう。その場合には、夫の無駄づかいのために店が改装できず、店の将来の収入は減る(国の将来の生産力は落ちる)だろう。
 
《2つの解決の道があるけれど》
 国債増加対策は2つある。
1つは安易な増税またはその変形であるインフレ(国債日銀引受け)によるものである。インフレによって借金の実質価値を減らすのである。事実、こうなる可能性が高いと野口は予測している。
2つは「経済成長の実現」である。高い成長によって税収をあげ国債発行を減らす。だが野口はその実現に懐疑的である。民主党政権の財政政策も自民党のそれと同じくムダの多い「バラマキ」である。「子ども手当」「農家の戸別所得補償」がそれだという。その政策は国民経済の生産性向上にならないのである。

野口論文は結論部分で次のようにいう。
▼では、一体どうしたらよいのか。非現実的・乙女の願い的シナリオであることを承知の上で言えば、インフレで身ぐるみはがされる危険を国民が自覚し、それを回避するように政治に働きかけることだ。無駄遣いを減らし、国の支出を経済力に見合ったものにすることである。(略)もっとも重要ななのは、店の売上を伸ばすことだ。それさえできれば、すべての問題は解決する。夫の多少の無駄使いなど、大目に見ることができる。しかし、それが実現できないのであれば、事態を直視しなければならない。これまでのように酒を飲み続けることは、もうできないのだ。

過去20年間の財政投資が非効率だったこと、「バラマキ」政党の自民・民主ともに的確な財政政策を提示できないこと、国民も危機の実態を直視していないこと、「経済成長の実現」によってしか財政危機は解決できないこと。


リベラル21コメント参照
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